東京地方裁判所 昭和41年(刑わ)5832号・昭41年(刑わ)5453号 判決
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〔判決理由〕判示第二各記載の搬出貨物は、いずれも被告人が判示のように不正な行為により関税を納付しないで輸入したものであつて、関税法第一一〇条第一項第二号違反の犯罪にかかる貨物というべきであり、かつこれらの貨物は、右犯罪が行われた後処分されて現存していない事実が窺われるので、その貨物の犯罪当時の価格に相当する額を追徴すべきか否かが問題となる。しかしながら、証拠によれば右各貨物は野村貿易株式会社ら輸入業者の所有であつて被告人の所有ではなく、かつこれら所有者は、被告人の本件犯行を予め知らないでその当時から引続き所有していた事実が認められる。従つてこれらの各貨物が裁判時に現存していたとしても、関税法第一一八条第一項但し書第一号の規定に該当し、没収することは許されない筋合いのものである。
ところで同法第一一八条第二項(以下単に第一項または第二項等というときは同条第一項または第二項をいう。)は、「前項の規定により没収すべき犯罪貨物等を没収することができない場合又は同項第二号の規定により犯罪貨物等を没収しない場合」にはこれに代えて追徴する旨規定している。そしてここにいう「前項の規定により没収すべき犯罪貨物等」とは、第一項本文による犯罪貨物に該当し、かつ法律上没収を妨げる事情の存在しないもの、すなわち同項但し書第一、二号に該当しないものをいうと解すべきであるから、その反面解釈として第一項但し書第一、二号に該当する貨物は、たとえ同項本文の犯罪貨物であつても第二項にいう「没収すべき犯罪貨物」には当らないものである。従つて第一項但し書第一、二号に該当する犯罪貨物が、犯罪後費消その他の処分によつて滅失し裁判時現存しなかつたとしても、本来の貨物は「没収すべき犯罪貨物」ではなかつたのであり、また追徴は没収不能の場合、これに代る換刑処分であるというその本質から見て、すくなくとも第二項に掲げる「没収することができない場合」としてこれに代る追徴をすべきでないといわなければならない。
ただ第二項によれば、第一項但し書第二号の規定によつて法律上没収しない犯罪貨物については、これに代えて追徴するものとしているので、この場合には裁判時その犯罪貨物が現存するときは、勿論、滅失して現存しないときでも「没収しない場合」として追徴すべきであるが、同項がことさら第一号を掲げていない趣旨に鑑みれば、第一項但し書第一号に該当する犯罪貨物は結局没収、追徴の対象から除外しているものと解するのが相当である。して見ると、第一項但し書第一号に該当する犯罪貨物は、犯罪後滅失し裁判時現存しなかつたとしても、第二項の規定による追徴をすべきものではない。
以上の理由により本件については被告人に対し追徴することは相当ではないから、その言渡をしない。(近藤暁)